歌词
それがいつの頃からか、何かが変わってきたことに気付いた。
僕が小学校高学年、兄が中学生の時だったように思う。
いつも兄と比較されていることに。
お兄ちゃんは本当に頭がいいのに、
気のつく優しい子なのに、
しっかりした子なのに、家の手伝いもよくするのに。。
それらの言葉はすべて僕に向けられているようで、ひどく悲しくなった。
母だけでなく、近所の人全員がそう言っているように思えてしかたなかった。
とくに父親の態度は厳しかった。
学期末の成績表を差し出した時のことだった。
クラスでも後ろから数えた方が早いほど、ひどい成績だった。
父親は烈火のごとく怒った。
「お前はなんてだらしないんだ、勉強もせずに何をやっていたんだ?少しは兄ちゃんを見習え!」
父親の平手が飛んできて、僕はもんどり打った。
床に打ちつけた頭が痛くて、思わず泣き出すと、父はますます怒った。
「この泣き虫め、そんなだから学校でもいじめられたりするんだ!」
確かに、この時は学校でもひどいいじめに遭っていた。
元々気が弱く、大人しい性格の僕は絶好のターゲットになっていた。
登校すれば上履きがない、机の上には「死ね」の落書き、教科書もゴミ箱に捨てられた。
休み時間にはトイレに閉じ込められた。
授業に出られなかったことを教師にひどく叱られた。
それでも、僕はいじめに遭っていることを誰にも言えなかった。
仕返しがこわかったからだ。
いじめがもっとひどくなることが恐ろしかったからだ。
兄と一緒だった低学年の頃は、誰にもいじめられなかった。
いつでも兄が守ってくれたし、睨みをきかせてくれていた。
しかし、兄が卒業すると同時に、いじめは始まった。
家に帰っても親にいじめられている気がして、悲しくてしかたなかった。
父親に怒鳴られている時も涙が止まらず、ますます父の怒りをあおった。
「父さん、その辺で許してやってくれないか」兄が見かねて口を出した。
すると、父は「まったく、意気地なしめ!」と捨て台詞を吐くようにして自分の書斎へと入っていた。
この時はじめて、兄に対する嫉妬心が生まれた。
確かに、父親の暴力からは救ってくれた。
それは、あの幼い頃の野犬の時と同じだった。
でもそれよりも、あの父親に対してさえ兄の意見が通ることに、
僕は心から絶望に似た感情を持った。
「大丈夫か」いつもの優しい兄の声だったが、それすらも辛くて、
兄の差し伸べる手を振り払って叫んだ。
「ほっといてよ、どうせ僕は勉強もできない駄目な子なんだ。」
階段を駆け上がり、自分の部屋に入って布団を被って泣いた。
この時ほど兄を憎らしく思ったことはなかった。
兄はもはや僕にとって正義のヒーローではなかった。
あまりに惨めな自分がかわいそうに思えて、また泣いた。
この日をきっかけに、僕は部屋に閉じこもるようになり、兄ともほとんど口を聞かなくなった。
部屋で一人ゲームをしている時間だけが、僕を癒してくれた。
学校に行ってもいじめられる、学校に行かなければ父親に殴られる。
だから僕は学校に行くふりをして、近くの公園で一人ぶらぶらすることが多くなった。
しかしそれも担任からの連絡ですぐにばれ、また父親に殴られた。
とうとう僕は部屋から一歩も出なくなった。
腹が減ったら家の金を持ち出し、お菓子や弁当を買って部屋で食べた。
母親や兄がいくらドア越しに声をかけても、返事さえしなかった。
夜には父親が帰ってきて、すごい剣幕でドアを叩くが、僕はそれさえも無視した。
やがて誰も僕に声すらかけなくなった。
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