歌词
右往左往する魚釣る竿
握る拳 野伏顔負けの面構え
踝から米噛みまで、 爪先から旋毛風
運任せ 地の果てまで想い馳せ
先にその名を轟かせ
次に藪から棒に訪れて驚かせ
野暮な話は抜きで垢抜け
場が砕けた所で 頃合いを見計らい、そっと降ろす風呂敷
徐に広げれば 中には何やら不可解な 道具一式
子供は親の影に隠れて 男は勇気を振り絞り 覗き込む
すると今度は 無言で組み立てを始める 周りは息を飲む。
完成した絡繰りは 硝子細工よりも珍しい代物
色も七色に光り、その様は 虹を漆に閉じ込めた模様
形は角のとれた重箱 更に技施して加工の程
これを見た者共は、一歩後ずさり次に来る言葉待つ。
「オロロンチョウ オロチョンナー、一寸だけお耳頂戴な この話」
そう言い放ち、 傍から出す 恐ろしく円い鉄煎餅
手元の謎の箱の引き出し 勝手に開き それを中に放り込む
すると何処からか 不思議な音が鳴り始め 周りは息を飲む。
歌い終わると、ぴたりと止んでいた風がひやりと吹き始める
狐につままれたかのような 奴がやっとこさ我に返り、問う。
「今のは一体何ぞ、心の臓と腸が まだ震えておる。
これは幻か、真しか、呪いか、はたまた まやかしか。」
「全て間違いに或らず と同じく全てに或らず
必ず 答えの数一つとは限らず さしずめ夜の星の図」
と返す。
「誰の指図か嗾けか知らんが、お主は危険極らん。
これ以上 ここで振る舞うことは怪しからん」
と怒鳴るのは村の若頭。
「お望みとあらば、この場と然らば、いざ人目憚るのならば、
お別れの言葉に 代えて遅ればせながら語る諸刃の刃
拙者は海の遙か彼方から来た、しがない時の旅烏
人呼んで旋毛風 詠う人の世の償い儚むべからず」
「はあ、願わくば、お許しをそしてご理解の程を
この辺りでは、声と枕高くできぬ事情もありまする故」
と一同ひれ伏す。
「面を上げなすって 拙者は、朗報を届ける放浪の身。
魚心あれば水心あり、人を繋げるのは言葉なり」
夜も更けて 火が燻る頃も尚、話の花は 頗る熱く
咲く度に 村の者共は、募る想いを 拙い筆で記す。
「戦で荒れ果て、痩せた畑、皆疲れ果て、尽きた糧
それ以来、災い、患い、病と弔いが止まぬ」
風は応える:「時の河を越えても、 又、世の常、祈らば渡しに船。
堪え忍ぶ者は、幸来たる為に 実が成らずば 再び蒔く種。
天の神に授かりし民の力、合わずばお上にも勝り。
大木をも倒す姿、正に黄金色の知恵の鉞。
戦を選べ 錆びない武器を持て
裏表のない玉になれ 何処にでも転がれ
面を上げ胸を張れ、戦を選べ。
若者は 志高く、山と谷のみならず 海を越え
万物に学び 万里を歩き、己を土産に持ち帰れ」
歌い終えると、腰を上げて 荷物を風呂敷の中に詰め込み
戸口で振り返り 御馳走の御辞儀を 傘を傾け朝霧に
感極まった者共は 岩のように重く、その場に固まり
一人の童だけが粉雪の中の草鞋の後を眺める。
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