冬空の蛍

冷えた雨が降る　晴れた日の白い空

季節外れの蛍は飛んだ三秒後に燃え尽きた

騒がしい人混み　明日までの予定表

全部投げ捨てて消え去りたい夜もある

今日が来なければ　昨日のままいられたら

全部忘れたまま　生きていられたのに

君と見たあの空はまだ僕を待っているか

錆び付いて置いて行った　あの日のまま

透明な影法師　冬空の蛍

朝焼けに溶けていく　景色全部

一方通行　行き止まり　回り道

地図の案内は古くて迷子になる

抱えきれないものは焼却炉に投げ込んだ

思い出か古傷か　僕が燃やしたのは

あの日の陽炎が今もまだそこにある

揺らめいて佇んで僕を睨んでいる

君と見たあの空はまだ僕を待っているか

蔑んで突き放した　あの日のまま

透けていく影法師　冬空の蛍

追い付けないままでいい　諦めてる

焦げ付いた朝焼けの香りがする　香りがする

色褪せた夏の朝の匂いがする

今さえ季節でさえ関係ない　関係ない

そこにはあの日の跡がある

そんなものは　そんなことは　全部　全部　嘘だ

僕が見たあの空はまだ僕を待っているか

冬の日の夏の空　矛盾したまま

燃えながら飛び続ける　冬空の蛍

朝焼けに溶けていく　景色全部

忘れていく